朧の森に棲む鬼

「王の座を欲しくないか、おまえの命と引き替えに」
森が囁くとき、滅びが始まる──

[作]
中島かずき
[演出]いのうえひでのり
[出演]市川染五郎/阿部サダヲ/秋山菜津子/真木よう子/高田聖子/粟根まこと/小須田康人/田山涼成/古田新太


〔Story〕
野良犬のようにギラギラとした目の男が、シャレコウベを踏みつけ
歩いていく。そこは累々たる屍に埋まる深い森。


「王の座を欲しくないか、おまえの命と引き替えに」


突然現れた森の魔物《オボロ》の声が、その男の運命を変えた。


……「おもしれえ」


男の武器は、魔物にもらった<オボロの剣>。
そしてありとあらゆる嘘を生み出す、赤い舌。
放たれる無数の言葉は果たして正か邪か、善か悪か。
そして告げる想いは、愛か、それとも憎しみか。
嘘で染まった真っ赤な舌が、裏切りと憎悪の無間地獄を作り出し、
そして「オボロの剣」が、緑の森に赤い血を降らしていく―――。


『血よ。オボロの森を真っ赤な嘘に染め上げろ!
それが俺の、生きる証だ―――。』


〔感想〕
今年の初芝居&エンターテイメントは新橋演舞場で幕開けでございます。
13列中央という素敵な席をキープしていただき(ありがとう。K氏&S嬢)、
ほてほてと、仕事抜けて異空間へダイブでございます。


しかし松竹歌舞伎座、演舞場っていうのはエンターテイメントが凝縮された空間ですね。
食べ物もそれなりにおいしいですし、休憩時間はグッズをみたりして遊べます。
これに似た感動をディズニーランドで受けた覚えが・・・。


さて、「新感染」(新☆感線&染五郎のコラボをこう呼ぶらしい)第5弾は
久しぶりの中島かずきさんの新作です。
主人公は悪役。
もうこれが虚ろな魂を持つ悪役で素敵でした!
序盤迷い込んだ森の中で、運命の3人の女との出会いがもたらされます。
シェークスピアマクベスの3人の魔女との出会いのように殺伐として淫靡なシーンですね。
そこから、主人公たるライは悪への階段を一直線に進んでいきます。


そして最後は「リチャードⅢ」のような息をつめるような終焉まで
3時間の芝居の間だれるところはなくすばらしいお芝居でした。


特にいいなぁと思うのは、昔(スサノオの初演あたり)は
中島さんって恋情の描き方がやっぱ不得意かなぁと思ってたのですが
今回はすごい機微があってよかったです。
高田聖子さん演ずる式部が帝を暗殺しようとするシーン。
最近歌を詠まないねという帝の前で、無理やり歌を詠もうとする、
そして帝も気づいていながら、毒杯をあおるシーン。
何気にいいシーンだなーと思ってみてました。


あとやはり、激しい恋情を表す主人公ライと、彼に魅入られた女将軍とのアクションシーン。
これはもう、さすがにお上手としか言いようがないです。
ただやはり、滅びではなく君臨する悪の形というものも見てみたかったかもしんない。